不死身の納豆菌

古来から日本人のタンパク質源として重宝されてきた大豆。

そんな大豆を減量とした食品の中でも、納豆はよく食べられているものの一つだと思います。

今回お話するのは、その納豆をつくるために欠かせない納豆菌に関するエピソードです。

納豆

これは管理人が、微生物学を勉強していたときの話です。

 友人の一人が納豆の研究をしていて、協力を申し込まれた管理人はそれを手伝うことになりました。

知っている人も多いと思いますが、納豆というのは大豆に納豆菌を加えて作ります。

納豆をつくる納豆菌は、枯れ草などくっついている「枯草菌」という種類の一種で、学名に bacillus natto (バチルス ナットウ)という「そのまんまやないか!」とツッコミたくなるような名前が付いています。

水煮にしてから冷ましたマメに、市販の納豆などからネバネバを少し取って加えると、ネバネバの中にたくさん含まれる納豆菌がマメの表面にくっつきます。

その後、納豆菌は大豆をエサにどんどん繁殖して、ネバネバもどんどん増えてきて、やがて立派な納豆になるわけです。
このへんの原理は、ヨーグルトとほぼ同じですね。

で、そんな実験をしてると、納豆菌を含むサンプル、例えばシャーレなどを捨てなきゃいけないことがあります。

ただ、捨てると言っても、そのままゴミ箱というわけにはいきません。

微生物を含むサンプルを捨てるには、それなりのルールがあるからです。

具体的には、高温と熱で微生物を殺す「滅菌」という処理を行います。
そこで登場するのが、以前の記事でも登場した高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)という装置。

オートクレーブ

当時、我々が使っていたオートクレーブの手順書には、
「全ての微生物を死滅させる効果が~」
という説明が書いてありました。

友人と管理人は、ルールに従って温度と時間を設定し、不要になったサンプルをオートクレーブにかけることにしたのですが・・・

生命力が強いことで有名な納豆菌が本当に死んでいるのかどうか不安になり、滅菌後のサンプルを調べてみることにしたのです。

納豆菌が死滅しているはずのサンプルの一部を取って、それを新しい培地(微生物を増やすためのゼリー状のもの)に乗せて培養器にセット。

もしも納豆菌が死滅していれば、何の変化も起こらないハズなのですが・・・

生きてる生きてる!

過酷な高圧蒸気滅菌を耐えぬいた納豆菌が、培養シャーレの中でどんどん増え始めたではありませんか!

結局、オートクレーブの装置は納豆菌に汚染されてる可能性が高いので、先生に命じられて学校に居残り、徹底的な分解洗浄をすることに・・・(涙)。

以後、納豆菌を含むサンプルを滅菌するときは、処理時間を倍にすることになったのです。

納豆を食べたあとは口の中に粘り気や苦味が残ったりすることがよくありますが、納豆のしつこさは味や臭いだけでなく、微生物学的レベルにまで及んでいるという話でした。

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